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そこには、和服を着た美青年が立っていたのだ。
栗色の長い髪を高いところで結び、肌が病人のように白い。
彼もまた、驚いた顔をして私をじっと見つめている。
少しの間見つめ合い、私は我に返ると会釈をして彼から離れようと歩き出す。
「あなたは、何者ですか?」
風のように澄んだ声が響き渡る。
「へ?」
いきなり話しかけられてまぬけな声が出てしまう。
「見たこともない着物を着ておられますが…。」
「これは着物じゃなくて洋服ですけど…。」
意味不明な質問だった。
でも、首を傾げる彼の反応の方がもっと意味不明だ。
今日の私は薄いセーターに花柄のロングスカート。
決して変な格好ではないと思うのだけれど。
私からすれば、こんなところで髪の毛まで結んでコスプレをしている彼の方がよっぽど変人だ。
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