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七、再会と後悔と
九月某日。
僕は新幹線に乗り、東北へ向かった。
あの後、何度か文通をし、大型連休に会うことになったからだ。流石に、北海道までは遠すぎるので、剣くんと僕の中間地点に集まることにした。
手紙の中でも、剣くんは変わらず、優しかった。拙い僕の文章や行間を読み取って返事をしてくれた。
喫茶店で待ち合わせ。
僕は、約束の時間よりも一時間早く到着した。心の準備がしたかったから。
約束の店は、学生でも入りやすいと、密かに評判でコーヒーが有名だそう。
扉を開くと、カランカランとドアベルが音を立てた。店内には名前も知らないジャズが流れていた。思っていたよりも空いている。
僕はコーヒーを注文して、店内を見渡した。奥のテーブルで読書をしている青年がいる。名も知らない彼を見習って、読書をすることにした。心を落ち着けるために。
コーヒーが運ばれてきた。
店員はバイトの学生のようで、背丈は小さいながらもちょこちょことよく働いていた。
コーヒーを一口啜ると、程よい温かさが体内に入り、心が安らいだ。今なら、剣くんと普通に話せるかも……と思っていた。
「よっ!」
突然、後ろから肩を叩かれ、危うく読んでいた本を落としかけた。
振り返ると剣くんが、あの頃と変わらない笑顔を浮かべていた。白い歯が眩しい。
「久しぶり……」
「おいおい、元気が無いなぁ~。大丈夫か?」
剣くんに顔を覗かれる。剣くんは僕の勘違いに怒ってないのだろうか?
「朔、コーヒー飲んでるいるのか……じゃあ、俺もそーしよ」
剣くんは店員さんを呼び、注文をした。
緊張するが、ちゃんと話さなくては……折角、ここまで来てくれたのに。
妙なプレッシャーを感じる。
しかし、目の前でニコニコ笑う剣くんを目にすると不思議と言葉が続いた。
「剣くん、あの時はごめん……僕の勝手な勘違いで避けてしまって……」
「手紙、読んだよ。あいつらが余計なことを言ったんだろ? お前は悪くない。言えなかった俺が悪いんだ」
俯く僕に剣くんは、少し悲しげに笑って、話してくれた。
「俺さ、あの頃は朔といるのが一番楽しくて、『親友』だと思ってた。
だからこそ、離れてしまうなんて考えたく無かったし、朔の悲しい顔を見るのも嫌だった。笑えるよな……それで朔を傷つけたってのに」
剣くんは、乾いた笑みを浮かべる。
僕が知らなかっただけで、剣くんは僕を大切に思ってくれていた。
結果的に、僕が剣くんを傷つけたんだ。
それなのに、僕は勝手に傷ついて、剣くんを分かろうともしなかった。
後悔が渦巻く。
ぐぅ~
沈黙を破ったのは、僕のお腹の音だった。
そう言えば、朝から何も食べてない。
緊張で喉が通らなかった。
「クックックッッッッ~! 腹、減ってんのか? 何か頼む?」
剣くんは笑いを噛み殺しながら、僕にメニューを渡した。
恥ずかしい。
メニューには、美味しそうなナポリタンが載っていた。
剣くんにも見せると、「俺も食べる」と答えたので、店員さんにナポリタンを2人前注文した。
暫くして注文の品が届いた。
ほかほか湯気が出ていてとっても良い匂いがした。
僕たちは、ナポリタンを口にした。
今までに食べたものが比にならないくらい美味しかった。
それから僕たちは、2年の年月を補うかのように話し込んだ。
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