九、サクラとのけんか

1/1
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ

九、サクラとのけんか

 そんなこんなで、気がつけば、二学期も終わりが近づいてきた頃、サクラとけんかをしてしまった。  キッカケは、サクラからの問い。 『ねぇ、朔。友人くらい、ちゃちゃっと作りなよ』  そうなのだ。  僕は、今の今まで、何の努力もしないで、ただ学校に通っていただけだった。それに、サクラが呆れ果てたのだ。  僕は誰かの手助け無しに自分から、人に関わろうとしない。  傷つくのが怖いから。 「サクラには、分からないだろうけどさ、友人なんて、一朝一夕にできる物じゃないんだよ」  そう言って、有耶無耶にした。  それを聞いた、サクラは、頬を膨らませてどこかへ行ってしまった。  家に帰ってからも、サクラからの言葉が忘れられない。  『ちゃちゃっと友人を作れ』か。  確かに僕は勇気が無くて、他人と関わろうともしてこなかった。  でも、仕方ないじゃないか。  僕にとって、他人とは恐怖の対象でしか無い。  剣くんとの、いざこざも理由の一つだけど、それだけじゃない。  他人は未知の生き物で、一体、何を考えているのか分からないから、怖いんだ。  だから、僕には、自分から作った友人がいない。  中学時代も剣くんの助けがあってこその僕だった。  そもそも、どうやって、友人になるのか、何をしたら、友人なのか、分からない。    やっぱり、先輩みたいに人望のある人が『さくら係』になるべきだったんだ。僕が悪いんじゃない。人選ミスだ。  それに、僕だって、好きで独りでいるんじゃない。  ただ、僕は、無愛想だから、気づかぬうちに相手を傷つけてしまうのが怖い。それに、中学時代みたいに裏切られて辛い思いをしたくない。  それなら、いっその事、独りでいよう……そう考えるのは、自然な流れだと思う。  こうやって、僕は自分を守るために他人から逃げるんだ。  あー。自分の中に、嫌な感情がぐるぐると渦巻く。  もう、今日は寝よう。そして、また明日、今後のことを考えよう。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!