十一、新たな一歩

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 その日の放課後。  僕は校舎裏へ向かった。  会える保証は無かったけど、どうしても報告をしたくて。  サクラと初めて会話した位置に着くと深呼吸をして、空を(あお)いだ。  青空を背景に、サクラがふわりと現れた。 『朔。君は良い奴だよ。頼まれたことは断らないし、責任感も強い。  たとえ目立たなくても、誰かのために頑張った事実は消えないし、みんな知ってるよ。だから、自分を卑下するのはやめて、自信もちなさい』  サクラ……。    僕も、本当は気づいていた。    リーダーにならなくても、少しの勇気で、誰かのために頑張って、助け合って、クラスに貢献できること。  少しの行動で救われる人がいること。  そして、サクラが僕を励まして、良い方向に連れていこうとしていることに。  でも、知らないフリをした。  それは、僕が弱いから。心の鍛錬を怠っていたから。  そして、分かりたくない、僕は一人でも大丈夫な強いやつだって、思い込みたかったから。  サクラは本当に不思議な存在だな。  僕の心は、ずーっと昔から、凍っていたのに。  それこそ、永久凍土か! って程に、誰にも融解されなかったのに。  こんなに小さな妖精に諭される日が来るなんてな。    もう、サクラと出会った今年が終わりを迎える。  僕に残された時間は、あと三ヶ月。  何ができるかなんて分からない。  でも、確かに大きな一歩を踏み出すんだ!
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