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十二、それから
サクラと出会った、あの春から一年が経った。
サクラに諭された後、一念発起して、文芸部の戸を叩いた。
なぜ、文芸部なのか。
それは朔也くんに誘われたから。
ノートでサクラに反撃しているのを、小説家志望だと勘違いしていたそうだ。
文章を書くのは嫌いじゃなかったし、『今しかできないこと』をして後悔ばかりの高校時代を、少しでも良いものに塗り替えるために。
科学部は名前だけ入って、活動はしていなかったから、転部した。
文芸部の活動は、とても興味深かった。
自分の書いたものが形になる。それを読んでくれる読者も一定数いる。
もっと早くに、入部していたらと、惜しく思う。
身近な所に、出会いも、チャンスも、きっかけも、転がっている。
それに、気づけるか、それを、手にできるか。
それが、大切なことだと学んだ。
そして、サクラはというと、三学期の終業式を終えた辺りから、また姿を見せなくなった。
サクラには、とても感謝している。
サクラがいなかったら、僕は何も変われなかった。
もし、『さくら係』に抜擢されていなかったら、変わろうとする、努力もしないまま、孤独に過ごしていただろう。
もしかすると、先輩は、そんな僕を見越して、指名してくれたのかも……。
きっと、サクラは、もう次の『さくら係』の元にいるのだろう。
寂しくない、と言えば嘘になる。
でも、きっと僕がくよくよしていては、サクラに怒られるから。また、サクラに会える日を夢見て、日々を大切に、過ごしていくんだ。
サクラは僕にとってかけがえのない『友』だから……
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