十二、それから

1/1
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ

十二、それから

 サクラと出会った、あの春から一年が経った。  サクラに諭された後、一念発起して、文芸部の戸を叩いた。  なぜ、文芸部なのか。  それは朔也くんに誘われたから。  ノートでサクラに反撃しているのを、小説家志望だと勘違いしていたそうだ。  文章を書くのは嫌いじゃなかったし、『今しかできないこと』をして後悔ばかりの高校時代を、少しでも良いものに塗り替えるために。  科学部は名前だけ入って、活動はしていなかったから、転部した。  文芸部の活動は、とても興味深かった。  自分の書いたものが形になる。それを読んでくれる読者も一定数いる。  もっと早くに、入部していたらと、惜しく思う。  身近な所に、出会いも、チャンスも、きっかけも、転がっている。  それに、気づけるか、それを、手にできるか。  それが、大切なことだと学んだ。  そして、サクラはというと、三学期の終業式を終えた辺りから、また姿を見せなくなった。  サクラには、とても感謝している。  サクラがいなかったら、僕は何も変われなかった。  もし、『さくら係』に抜擢されていなかったら、変わろうとする、努力もしないまま、孤独に過ごしていただろう。  もしかすると、先輩は、そんな僕を見越して、指名してくれたのかも……。  きっと、サクラは、もう次の『さくら係』の元にいるのだろう。  寂しくない、と言えば嘘になる。  でも、きっと僕がくよくよしていては、サクラに怒られるから。また、サクラに会える日を夢見て、日々を大切に、過ごしていくんだ。  サクラは僕にとってかけがえのない『友』だから……
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!