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二、さくらの妖精さん
授業を終えた僕は、人気の無い、校舎裏に向かった。
誰もいないことを確認して、ヤツに話しかけてみた。
「おい。君は、本当に『さくらの妖精さん』なのか? なぜ、僕にしか、見えない?」
今日1日中、ヤツは僕の周りをふわふわ飛んだり、肩に乗ったりしていた。
しかし、それに気づく者は、誰もいなかったのだ。
『だーかーらー、私が、噂の『さくらの妖精さん』だって言ってるじゃない。君にしか、見えない理由は、私が君に取り憑いているからだよ♪』
「はぁ? なぜ僕? 他に適役な人がいないのか?」
ヤツは、ふふふと、笑って、こう言ったのだ。
『えっとね、君の先輩、上川作弥って知ってる? 彼が前年度までの『さくら係』だったから、それで君が、指名されたのよ』
上川先輩……僕の所属している、科学部の前部長じゃねぇか! 面倒なことを押しつけられた……。次、会ったら、不満をぶつけてやろう。
しかし、その前に聞き逃せない単語があった。
「『さくら係』って何?」
『あー。それね、説明するの、面倒だし、これ見て。前年度の様子と、引き継ぎビデオレター♪』
そう言って、ヤツは校舎の窓にそれを投影した。
『お~い。青葉! 久しぶり! えぇ~と、今回は勝手にお前を後任にして、すまん』
窓に映った上川先輩は、屈託の無い笑みを浮かべながら、『さくら係』について、教えてくれた。
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