二、さくらの妖精さん

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 先輩の話を要約すると、結局、『さくら係』というのは、サクラからのご神託を、活用する人のことらしい。  取り憑かれた人間が幸せになれる、という噂は半分嘘。  取り憑かれた人間は、サクラの『しもべ』として、一年間、幸せになれるように努力するのだ。  取り憑かれるだけで、無条件に幸せになれたら誰も、苦労しない。  そして、『さくら係』に任命された生徒は四月に、サクラからご神託を賜り、それに向けて努力をする。  何をするかは、具体的に決まっていなくて、自分がするべきだと思うことをするらしい。  ちなみに、先輩はボランティア活動をしていた。  地域に、密接に関わって、沢山の人に感謝されて……  僕には、とても真似できない。  そもそも、先輩は明るくて、リーダーシップがあって、規則はキッチリ守るけど、それが周囲に嫌みにならなくて、笑顔が素敵な、本当に先輩の鏡みたいな人だった。  僕とは真逆の人間。  僕は、ただの堅物で、仏頂面で周りを巻き込む力も、魅力も、勇気も持ち合わせていない。  それなのに、どうして僕なんだろう。 『朔、分かったかい? これから一年ヨロシクね!』  サクラは、不敵な笑みを浮かべた。  もしかして、僕、とんでもないヤツに捕まってしまったんじゃ……。 『あ。言い忘れていたけど、朔への神託は、『友人を作る』だからね、ファイト!』  え。ご神託って、そういうやつ?   もっと、仰々しい、『地域に貢献せよ』とかじゃないの?  サクラに聞くと、『それぞれの、『さくら係』のレベルに合わせて神託をしているんだけど?』と、言われた。  成る程。  でも、僕には『友人を作る』というのも、なかなか、ハードルが高いのだが……。 『朔、知ってる? 神は乗り越えられる試練しか与えないんだよ』
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