四、図書室のヌシ

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四、図書室のヌシ

 僕の日課である、昼休みの図書室訪問。  我が高校の図書室は、校舎から離れた所に位置している。おそらく、増築を繰り返したためであろう。  僕は、この静かで、ゆったりとした時間が大好きだ、  人々の喧騒が遠くに聞こえる。  まるで、違う世界に迷いこんだかのように錯覚してしまう。    僕は、借りていた本を返却し、いつもの棚に向かった。  今、僕が返したのは、『走れ! 陰陽師!』シリーズの第3巻。  僕は、次の第4巻を手に取ろうとしたが……それだけが棚に見当たらない。  しまった……。誰かに借りられてしまったのだろう。  数年前に流行ったシリーズだから、今さら読むのは僕くらいであろうと、高を(くく)っていたのが、失敗だった。  あぁ~。どうしよう。  もう、続きが気になって仕方がないのに。  どうしても、諦めきれず、棚の前に立ち尽くしていると、サクラが僕の肩を叩いた。 『朔! 見て!』  サクラが指す先に、一人の男子生徒が本を読んでいた。  周りにいくつもの本を積んで、熱心に読み(ふけ)っている。  そして、今、彼が読んでいるのが、『走れ! 陰陽師!』の第4巻なのである。  彼のことは、いつも気になっていた。  積んである本が、毎日、全く違う上に、様々なジャンルの本が、まぜこぜになって積まれているのだ。  スリッパのラインからして、同じ2年生であることは間違いないのだが、何組なのか、さっぱり分からない。  しかし、あれほど読書が好きならば、きっと文系であろう。
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