五、苦い思い出

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五、苦い思い出

 中学1年生の頃。  その頃、僕には『親友』と呼べる人がいた。  その人の名前は、蒼間(あおま)(けん)と言い、明るく、クラスの人気者であった。  そして、僕らは中学の入学式で初めて出会い、そして、名字が似ていることもあって、すぐに仲良くなった。 「朔! 弁当、一緒に食おうぜ!」 「うん!」  お昼になると僕らは、陽の当たる窓際でお昼を食べた。  僕は、上手く話せなかったけど、剣くんが、話題提供をしてくれたから、いつも会話が途絶えなかった。 「なぁ~、朔。何で、学校のチャイムは、あの音なんだろうな? もっと、他にかっこいいの、無かったのかな?」  当時の僕は、それが、あのビッグ・ベンが鳴らす『鐘』のメロディだった、なんて知らなかったから、剣くんの投げかけに答えられなかった。 「朔! そんなに、もごもごするなって! 『何でだろうね~?』って、返せば良いんだよ!」  剣くんは、そんな風に僕に会話、と言うものを教えてくれた。  だから、これでも中学生の頃は、『友達』が沢山いた。  ……いや、いたと思っていた……の方が正しいのか。
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