五、苦い思い出

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 中学3年生、受験の年。  入学から2年が経った、その頃も僕と剣くんの仲は変わらなかった。  だから、僕も剣くんと一生、『親友』でいられると思っていた。  高校受験が終わっても、高校生になっても、就職しても……ずーっと、『親友』だと思っていた。僕らの関係は変わらないものだと信じて疑わなかった。  あれは、志望校を決定する時期だったと思う。  僕は、特に理由も無く、近くの進学校に進学するつもりだった。  剣くんの志望校も、そこだったから。  そんな軽い動機。  学力の心配は無かった。勉強だけはできたから。  未来に、何の心配も憂えも無かった。  しかし、別れというものは確実にあったのだ。  そんな、ある日の放課後。  忘れ物を取りに自分の教室に向かっていた時に、他クラスの教室から声がした。話していたのは、剣の部活友達。たまに、僕も話していた。 「なぁ! 聞いたか? 剣が北海道に引っ越すって」 「えぇー! マジで?」 「マジ。ていうかさ~、剣、いつも、朔といるじゃん? あれ、カワイソウだよな~」 「マジでそれ! 何で、あんな暗くて、運動音痴のヤツといるんだろな?」 「やっぱさ、カワイソウだからじゃね?」  僕は彼らの会話を、これ以上聞きたくなくて、自分の教室に逃げ込んだ。  『友達の友達は友達』  剣くんが、そう言っていたから、僕は彼らを『友達』だと思っていた。  なのに、こんな酷いことを、思われていたなんて。  でも、それよりも「剣くんが引っ越す」という言葉に驚いた。  僕は何も知らない。何も聞かされていない。  剣くんも、僕のこと『友達』だと思って無かったんだ。  剣くんは……僕の『親友』じゃなかったんだ。
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