短編集~プリズム 青紫の小さな花園

3/10
前へ
/13ページ
次へ
 ***  到着しても、やっぱり雨が降っていた。だからか、駐車場は余裕がある。  「降りる?」  ()かれたから私は(うなづ)いた。それほど強い降りでないから大丈夫。  「うん、降りる。このくらいなら、逆に綺麗に見えそう」  傘を持って車から降りた。今日は透明な傘を持っている。広げても視界が邪魔されない。軽い反動と音がして傘が開いた。  雨の日は、空気が澄んでいる気がする。大気に浮かんでいたほこりが、雨で綺麗に洗われたように感じる。湿気を帯びた木々は、枝先にまで水滴を輝かせていた。  グレーの空なのに、光って見えるのが不思議。  「綺麗だね」  私と同じように見上げる彼が静かに返してきた。  「うん、そうだね」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加