短編集~プリズム 青紫の小さな花園

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 街を(いろど)っていた桜が緑色の葉だけになって、やっと春が来たような気がした。  でも、まだ寒い日が時々あって、本当の春はもう少し先とも思う。  そんなある夜に、私は彼にお願いをした。  「ねぇ、今度の日曜日に行きたいところあるんだけど」  私の言葉に彼は確認してきた。  「いいけど、どこ?」  場所を言うと首を(かし)げた後、彼は(うなづ)いた。  「ああ、あそこか。いいよ。でも、天気大丈夫かな」  週間天気予報では、日曜日は雨と出ていた。  「う……ん。大丈夫じゃない?雨だと駄目って場所でもないし、もし降ってたら()いてそうでしょ」  「分かった。それじゃ、日曜日はそこに行って……別なところにも寄ろうか」  賛成した。どこがいいかと考えるのはすごく楽しい。もしかしたら、実際に行った時よりも楽しいかもしれない。
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