6人が本棚に入れています
本棚に追加
いざ、行ってみると、良くも悪くも"普通"。
八百屋のようなテントがずらりと並んでいる。
違和感があるとすれば、店頭に"物がない"こと。
それ以外は普通だ。
本当に魂を売買しているのだろうか?
遺伝子の売買とかならまだ現実味がある。
もちろん、非人道的なわけで、受け入れられない人が大多数だと思うが。
それでもまだ、遺伝子ならわかる。
著名人やルックスの良い人たちなら飛ぶように売れることだろう。
俺だってそれで金が稼げるなら幾らでも提供してやる。
需要があるかは別だが。
ともかくここのマーケットで取引されるのは遺伝子じゃない。魂だ。
とりあえず俺はそこにいる商人に概要を聞いた。
意味がわからんので。
商人の説明によると
この世界には一定数『魂の抜け殻』なるものが存在していて、そこに新しい魂を嵌め込むことでその身体は死を免れ、復活するとのこと。
『魂の抜け殻』とは大袈裟な言い方で分かりづらいが、要するに『意識不明の重体』のことだ。
生と死の瀬戸際とされる状態だが、息を吹き返すこともあればそのまま死ぬことだってある。
だが、どうやら『絶対に助からない命』というものがあるらしい。
まだ死んではいないが、その助からない命のあった身体が『抜け殻』。
つまり、魂を売った人間の身体は抜け殻とやらになり、その魂は"絶対に助からない命の身体"へ新しく嵌め込まれる。
結論、"命のリサイクルショップ"だ。
記憶や経験はそのまま、新しい人生を始めるというシステム。
身体は中古だが。
最初のコメントを投稿しよう!