思い切って魂を売ってみた

2/5
前へ
/14ページ
次へ
いざ、行ってみると、良くも悪くも"普通"。 八百屋のようなテントがずらりと並んでいる。 違和感があるとすれば、店頭に"物がない"こと。 それ以外は普通だ。 本当に魂を売買しているのだろうか? 遺伝子の売買とかならまだ現実味がある。 もちろん、非人道的なわけで、受け入れられない人が大多数だと思うが。 それでもまだ、遺伝子ならわかる。 著名人やルックスの良い人たちなら飛ぶように売れることだろう。 俺だってそれで金が稼げるなら幾らでも提供してやる。 需要があるかは別だが。 ともかくここのマーケットで取引されるのは遺伝子じゃない。魂だ。 とりあえず俺はそこにいる商人に概要を聞いた。 意味がわからんので。 商人の説明によると この世界には一定数『魂の抜け殻』なるものが存在していて、そこに新しい魂を嵌め込むことでその身体は死を免れ、復活するとのこと。 『魂の抜け殻』とは大袈裟な言い方で分かりづらいが、要するに『意識不明の重体』のことだ。 生と死の瀬戸際とされる状態だが、息を吹き返すこともあればそのまま死ぬことだってある。 だが、どうやら『絶対に助からない命』というものがあるらしい。 まだ死んではいないが、その助からない命のあった身体が『抜け殻』。 つまり、魂を売った人間の身体は抜け殻とやらになり、その魂は"絶対に助からない命の身体"へ新しく嵌め込まれる。 結論、"命のリサイクルショップ"だ。 記憶や経験はそのまま、新しい人生を始めるというシステム。 身体は中古だが。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加