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これが唯一の救済措置な気がした。
優柔不断を極めている俺が珍しく迷わなかった。
思い切って売ってみることにしたのだ。
この魂を。
"売買"とは言っているが、金のやりとりはしない。
買い手の商人は抜け殻の中身を見つけ、売り手の当人は新しい人生を得る。
それでお互いWin-Win、といった取引だ。
元々金が普及するまでは物々交換でやってきたんだ。
そう考えれば特段不思議ではない。
ともあれ俺は商人と取引の話をした。
商人はニヤリと笑って頷き、『抜け殻リスト』を見せてきた。
幼児から50代までズラリと並んでいる。
高齢者は"先が短い"のでリサイクルには使わないらしい。
理にかなっている。
因みに"死体"や交通事故などで"既に身体がボロボロ"なものも使わない。
新しく魂を入れてももはや身体が機能しない、とのこと。あくまで綺麗な"抜け殻"を使う。
こいつも理にかなっている。
そんなわけで俺は誰の身体に入るか選んだ。
ゲームで言う、『強くてはじめから』を体験してみたかったので、6歳の少年の身体に入ることにした。
もしかしたらこの商人たちは悪魔なのかもしれない。
そうだとしたらある種、俺の願いは現実になるのか。
そんなくだらないことを考えるうちに俺の意識は飛んだ。
夢を見ている感覚だ。
突拍子もない展開。
隣で会話してた奴が振り向けばいつ間にか違う奴になっている。
でもその場では不思議ともなんとも思わない。
だって夢だから。
そんな急展開を繰り返していくうちに病室で緊急治療を受けている少年が目に入る。
視点が高い。
俺はどこにいるんだろう?
一瞬そんな疑問を抱いた途端、俺の視点はどんどんその少年へ近づいていった。
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