強くて始めから

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『さとる』君の家は賃貸のアパートだった。しかも"母子家庭"である。 兄弟もいない。 そう考えると唯一の家族を失いかけたこの母親には正直同情した。 復活したはいえ、人格が"俺"になっていることに罪悪感すら覚えた。 人生のリスタートに胸を躍らせていた自分を後悔したくなった。 だが、ネガティブは"前の俺"の悪い癖だ。 俺は今、『さとる』なんだ。 「あの、お母さん。ごめん、俺、前の記憶がないんだ…。ホントになにもわからなくて…」 思い切った。 思い切って"27歳のスタンス"の言葉をぶちまけた。 母親は予想通りの瞳孔の開きっぷり。 だが、すぐに柔らかい表情になって言った。 「…いいのよ。生きていてくれればそれで。まだ子供なんだし、いくらでもやり直せるわ」 なんて出来た女だ…。 6歳のガキは感心した。 母親は俺を快く受け入れてくれ、驚くほど早く溶け込んだ。 時折り驚いた表情は見せるものの、逆に不思議なくらいに受け止めてくれる。 リハビリという体でさとるの情報をインプットしていくうちに、あっという間に2週間の時が流れた。
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