強くて始めから

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余談だが、違う身体に入ることはタイムスリップではない。 あくまで、魂を売ろうとしたその時期に抜け殻になった身体と取引している。 つまり、同じ時代のどこかを生きる人物になったに過ぎないのだ。 会おうと思えば知り合いにだって会える。 その気はないが。 ともあれ、俺が売ったのは3月中旬。 新年度になる前に意を決したわけだ。 そして、さとるは今6歳。 そう、今日は小学校の入学式。 ここからが『強くてはじめから』の真骨頂だ。 当日、 期待に胸を弾ませ、ランドセルを背負って黄色い帽子を被ったガキンチョ共がうようよしている。 俺もそのうちの1人。 自我が目覚めまくっているので恥ずかしいったらない。 ちょっとため息をつきながら歩いていると後ろから肩を叩かれた。 「さとるくん…!?病気で倒れたって聞いたけどもう大丈夫なの!?心配したんだよ!?」 この子は、あー、写真に載っていた。 確か、『あけみちゃん』だ。 さとるの幼馴染みらしい。 「う、うん、もう大丈夫…。でも、前の記憶が全然なくって、あけみちゃんのことも殆ど覚えてないんだ…」 するとあけみちゃんは一瞬悲しそうな表情をしたが、すぐに切り換えて言った。 「そうなんだ…。でも…!記憶がなくたってあけみはずっとさとるくんの友達だから!またすぐ仲良くなれるよ!」 すごい…。 この時点で既に男女の精神年齢の差が伺える。 素敵な子だ、あけみちゃん。 幼馴染みというシチュエーションは魅力的だが流石に幼女にときめくことはない。 どうやら俺は"ロリコン"ではなかったみたいだ。
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