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危険なテリトリー
「噂によれば、亡くなった子供の頭をお母さんが探し続けていて、来る人の首を切り落としてはお地蔵様の上に置いて、これも違う、あれも違うと窪地に捨てているそうよ」
そうか。そうやって首を置いているから、あのお地蔵様の首のところは苔に覆われていなかったのか。
「あの山は立ち入り禁止でしょ? 危ないから入っちゃダメ。勿論、滑り台の上の森もね。神隠しに遭ったら帰って来られないわよ」
「先生、神隠しに遭った人、いるの?」
「さぁ? ただ、あの森は防空壕があったり、裏は天神様や城跡へも抜けるそうだけど、ヤクザもうろついてると聞いているから、絶対入ったらダメ。昔、遺体も見つかってるしね」
そう言いながら手当てをしてくれた先生にお礼を言って、教室へと戻る。
そして、あの時変なことを言った友人に、聞いてみることにした。
「ねぇ、首切り地蔵の頭……」
「不格好だったよね。体とサイズ合ってないっていうか……でも何で、皆あれが首切り地蔵だと思ったの?」
この子には、見えていたのだ。
前回殺された人の首が乗せられた、その姿が。
「……私にも、多分みんなにも、あのお地蔵さんは首までしかない姿だったんだよ。頭、見えなかったから……」
「まさかぁ。そう言えば、逃げる時何か落としたよね?」
「あぁうん、お守りを……」
私はポケットにしまっておいたお守りを取り出す。
―― そう言えば、あの時ちょうど紐が切れて……?
毛糸で編んで作った紐だから、切れやすいのは確か。
だけど作ったのは最近で、あんなところに行くというから念の為にお守りを首から下げたのだ。
切り口を見ると、まるで刃物で切られたかのように真っ直ぐだった。
劣化して切れたのだとしたら、切り口は繊維の先が開いたように散らかっているはず。
「ねぇ、その紐が切れたところと首の傷痕の位置、一緒じゃない?」
切れた部分を結んで首から下げてみせると、位置はピッタリと合致していた。
「……切られたんだ」
「じゃあ、もしお守りがなかったら、私は……」
―― 首を、斬り落とされていた……?
背筋を冷たい汗が伝った。
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