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山道を上り、右手側へと視線を落とすと、崖下に焼却炉が見えた。
だいぶ高い位置まで登って来たことが分かる。
そしてとうとう、目的のモノが現れた。
「あれじゃない?」
左側の、下降していく斜面ぎりぎりの所。立派な杉の木の裏側に、苔むしたお地蔵様が1体鎮座していた。
首切り地蔵の名の通り、普通ならあるはずの頭はない。
―― これ以上、近寄らない方がいい。
本能なのか、そんな危機感が私の足をその場に留めた。
少女達は、面白半分に近づいて行く。
ざわざわと、木々が揺れて木の葉が舞った。
薄暗いとはいえ日の光が一応は届いていたのに、何だか急に曇ったように光が弱くなる。
湿り気を帯びた風が、生温かさを帯びて吹いた。
だがその風は、先程の風とは何となく違う。
沼の水気を含んだ風は、もう少しヒンヤリして感じるのに、今の風は生暖かい。そして何となく、ボロボロの金属を触った後のような、そんな金臭い匂いを嗅いだ気がした。
地蔵はよく見るような前掛けはしておらず、長年そこに居続けた証とばかりに半身コケで覆われている。
だが何故か、切り落とされた首部分には苔が避けるように生えていなかった。
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