検証

3/6
前へ
/13ページ
次へ
「ねぇ戻ろう。何かおかしいよ」  一人の少女が、途中で足を止めてそう言った。 「怖いの?」  リーダー格の少女が、馬鹿にしたような強気の眼光を向けて問う。  問われた側は、何かを言いあぐねるように口をもぞもぞさせてから、声を上げた。 「さっきから、聞こえてないの気が付かない?」  そう言って、ちらりと校舎の方へ目を向ける。  廊下には、児童の姿が変わらずあった。  それなのに、さっきまでBGMのように聞こえて来ていた喧騒(けんそう)が、今は全く聞こえない。 「風向きじゃないの?」  いくら校舎がすぐ傍にあるとは言え、風向きだけでこれほど静かになるだろうか?  ―― それにさっきの金臭い匂い、どこかで……?  理由の分からぬ焦燥(しょうそう)感が、心を支配していった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加