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「ねぇ戻ろう。何かおかしいよ」
一人の少女が、途中で足を止めてそう言った。
「怖いの?」
リーダー格の少女が、馬鹿にしたような強気の眼光を向けて問う。
問われた側は、何かを言いあぐねるように口をもぞもぞさせてから、声を上げた。
「さっきから、聞こえてないの気が付かない?」
そう言って、ちらりと校舎の方へ目を向ける。
廊下には、児童の姿が変わらずあった。
それなのに、さっきまでBGMのように聞こえて来ていた喧騒が、今は全く聞こえない。
「風向きじゃないの?」
いくら校舎がすぐ傍にあるとは言え、風向きだけでこれほど静かになるだろうか?
―― それにさっきの金臭い匂い、どこかで……?
理由の分からぬ焦燥感が、心を支配していった。
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