地蔵の所在地

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地蔵の所在地

 小学校の七不思議のひとつに、” 首切り地蔵(じぞう) ” がある。  どこにあるのかと言えば、学校の敷地(しきち)内にある山の中だ。  この小学校は山を一部切り崩して作ったかのような立地で、学校の敷地(しきち)の約半分が崖で囲まれている。  イメージ的には、右手の親指と人差し指でアルファベットのCを作ると分かりやすい。このCのラインが、全て崖なのだ。  そして崖の向こうは、鬱蒼(うっそう)とした森へと続いていた。  そんな特殊な地形を利用して、高学年向けの遊具は山の中に設置されている。  親指の先端から登った先には、絶景が堪能できる雲梯(うんてい)や、ちょっとしたアスレチック遊具が設置された広場があった。  標高は、運動場を挟んで向かいにある2階建て校舎の屋上とほぼ同じ。  木々が生い茂る森の中なので、昼日中でも光はほとんど届かず、いつも涼しく、どこか湿っぽい感じのする自然豊かな遊び場だ。  雲梯(うんてい)を通り過ぎて親指の付け根へと向かう道は、安全柵のない細い山道だ。  濡れ落ち葉の絨毯(じゅうたん)に、左側は崖、右側は山の斜面になっている。見下ろすと25mプールが(のぞ)めるが、もし落っこちても助からないだろう高さにある山道だ。  そしてその道を突き進み、親指の付け根まで来ると、巨大な滑り台が設置されている。  崖の斜面を利用して作られている為、角度が急で全長も長いが、この滑り台を滑れば楽に山から下りることができた。  そしてここから先、人差し指の方へは行けないようになっている。  雲梯(うんてい)から滑り台までの細い山道の間に、黄色い不気味なオブジェが置かれていた。  パッと見、ナメクジが首をもたげたような格好だ。  これを誰かが、” 首切り地蔵 ” だと言った。  この地蔵が見える範囲に10秒以上いると、首を切られて殺されるんだぞ、と。  だから皆、滑り台までの細い山道ではふざけることなく、一目散に早足で通るのがお約束だった。  しかしこの首切り地蔵、不気味なのは間違いないが、本当になのだろうか?  その疑問は、この山道を通る度に、私の頭の片隅をよぎっていた。
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