魔王だって幸せになりたい

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 それまでも一握りの下級魔族は住んでいたし、俺や他の上級、特級の魔族の手伝いなんかしてたんだけど、それ以外の下級魔族が城の外で村や町を襲っていたらしい。  その子たちを纏めて城に住まわせて、それぞれ上級魔族に面倒を見るように言いつけた。  その上で、もう魔族を増やさないと約束させた。下級魔族の作る低級の魔族が王都の周りで暴れるから勇者のご降臨があるのだ、と王様・・・『人』の王様に言われたらしい。  魔族は森から出ない。人は森に入らない。  そう約束をしたのだと得意気に語るガルは、良いことをして母親に褒められたい子供のようだった。  ちょっと可愛いと思ったのは、内緒にしておこうと思う。調子に乗ったら困るし。  中庭に住む村の人も未だ元気でいるし、城を構えている“魔王”も時々遊びに来る。  そして森の入口付近では面白いことになっている。  森から出られない魔族と森に入れない人達が、それでもお互いの地域の特産物が欲しいと物々交換が行われている。  魔族からは魔物の肉や薬、そして地味に中庭野菜が人気だったりする。  人の村からは、中庭で採れない野菜や小麦、そして器用な人の作る工芸品なんかが魔族に好まれる。  辺境の村は、魔族との取引で少しづつ財政が潤ってきているらしいし、こっちだって小麦が手に入ればパンや麺なんかも作れたりするので、食卓が賑やかになった。  それに伴ってガルたち魔族も少しづつ食事を摂るようになってきた。  それは俺にとってすごく嬉しい事で、ガルを守ってくれる魔族と顔を合わせてお礼を言ったりしてる。 「魔王様にそんな風に言っていただいて・・・!!」  とえらく感動してたけど、本当は当たり前の事。  それがもっと普通になればいいと思う。
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