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「寄るな!触るな!近寄るな!」
両手をワキワキと動かしていざメンテナンス!と嬉々として近寄るガルの目が異様にギラギラしていて怖い。
メンテナンスって言ったって関節の動きとか血脈の流れとかの確認だし、このメンテナンスだって何年か前に指先の感覚が何となくギシギシしたのが始まりで、結局は俺のためだってのは分かってるんだけど。
ガルは自分の玩具と称して下級魔族を何人か召し抱えてる。そいつらがもう、ガルの言いなりで俺を揶揄うのを使命としてるんだからタチが悪い。
ガルが顎をしゃくれば直立で「イエッサ!」と右手の拳を胸に当てて踵を打ち鳴らす。どこの軍隊だよっ!ってくらい統率の取れた陣形で俺を追い込む。
使いどころを間違ってるんじゃねぇのか!と毎度怒鳴るけど、何処吹く風で、とっ捕まった俺はガルのワキワキの餌食となるのだ。
「いーやーだー!」
鬼ー!!!と叫べば「魔王だし」と開き直るし、さてはドSだな?!と言えば「Sじゃない魔族はいない」とニヤニヤしながら更に部屋の角へと追い込まれる。
じわじわと迫る魔王ガルデリカは、なんて言うか・・・いじめっ子がいじめられっ子を追い詰めるっていうか、見た事は無いけど王城の警備が侵入者を追いかけるっていうか、とにかくキラキラと嬉しそうにしてるんだよ。
いや、ガルが嬉しそうなのは良い。それはいいんだけど、生贄が俺って!!
わかる。わかるよ。ガルにとっては俺が最高のご褒美だって。それくらい俺にもわかるんだ。わかるからこそ「やめろぉ!」と叫びたくなるのは仕方ない事だと思うんだ。
そうして俺を捕まえたガルがあちこち擽ったり擽ったり擽ったりした後、ぐったりした俺を抱えて幸せそうな顔をするから本気で拒否が出来ない。
このワガママで自分勝手で子供で奔放な魔王が幸せである事がこの、魔王の城の平和であると住まう全ての魔族がわかっていることなのだ。
だから魔王ガルデリカは俺を抱えたまま、満足げにこう言うのだ。
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