魔王だって幸せになりたい

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 この体になってから既に十年近く経っていて、それはアークレスんとこのキノが歩き出したりカタコトから流暢な言葉を話すようになったりした事で何となくこの位かな〜?って感じ。  赤ちゃんのキノは、毎日少しづつ与えていたアークレスの血が上手いこと作用して、諸々耐えられる大きさになった時に魔族になった。レヴィの所のネオリアはも少し早い段階で魔族になったけど。もちろんガッツリお仕置したけどな。  すごく時間がかかったけど、何百年と生きる魔族にとっては瞬きする程度の時間だよ、とアークレスは言う。  今じゃ『特級』の中でも右に出るものは無いくらいキノに甘い。・・・おかげでキノは何も出来ない子になっちゃったけど、アークレスがそれでいいって言ってるから良いんじゃないかと放っておいてる。  あの『勇者御一行様』は俺が一度死んだ事でガルに殺されちゃったんだと思う。  まぁあの後どうなったの、なんて聞かないしガルだって一から説明はしないから詳しくは知らない。  俺はどうやら攫われる前に出した熱が流行病だったようで、どのみち体の方は持たなかったらしい。そういえば熱が出る前に「熱が下がって治ったと思ったのに三日後くらいにまた熱が上がって身体中から湯気を出して死ぬ」とか聞かされて、そんな馬鹿な、と笑ったのを思い出す。ここに来てすぐ付けられたディンは、体の熱を下げてくれていたらしい。ガルの魔力とガルの付けてくれたディンのおかげで生きていられた。  それもあの勇者の一件の時にはギリギリだったみたいで、ガルのかくれんぼはこっそり俺の新しい体を作ってくれていたのだとか。  まぁガルの行動の殆どが俺関連だって言うのは知ってたし・・・とポリポリ頬を掻く。  魔王の城は、ゆっくりと変化して城そのものの形も変わった。もちろん中庭を囲むように口の形は変わらないけど、森に面した方にいくつか突起のように部屋ができた。城は生きていて、その時々で様相が様変わりする。  子供たちが大人になってきた事や魔族のなかでも下級と呼ばれる人達全てが城の中で暮らすようになった事が大きな原因だ。  今まで城の外で暮らしていた奴らも全部。
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