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4 銀河系の胃袋
圧巻の食べっぷりだった。
贄の食べ方は豪快で、ひと口ひと口が大きい。それが一定のスピードで続く。表情も余裕そのもので、食べこぼしなどもない。綺麗に食べていくから、いつまでも見ていられるな。テレビで観る大食いの選手たちは、なりふり構ってない人もいる。度が過ぎるのも俺は見栄えが悪いと思う。
凄い奴だ。本気の食いっぷりを見た。
俺がギリギリまでかかったステーキとライスを、5分も残して余裕で食べ終えてしまった。店員もギャラリーもしばらく時が止まったほどだ。
「改めてとんでもない胃だな」
店を出た俺たちは、自転車を押しながら新後駅のほうへ歩いている。
「胃だけじゃなくて、体全体がとんでもないって言ってほしいな♪」
言われてみれば、大きく開く口、飲み込む力、腸の働きもズバ抜けているんだろうか。……ってそうじゃない。さっさと渡すモンを渡そう。
「なあ、これさ……」
カゴの中のカバンから金一封を取って、贄に突きつけるように渡した。
「就職祝いだ」
贄は目を丸くして足を止めた。
「お母さんへのプレゼントは?」
「嘘だ」
「じゃあ、この大食いチャレンジは……」
「……贄の就職祝いに為だ! 言わせんな恥ずかしい!」
贄の顔が見れない。あえてそっぽを向いていたが、やっぱりどんな反応しているのかが気になった。
「嬉しい! めちゃくちゃ嬉しいよ、味方くんありがとう!!」
タックルのような抱き着きに、自転車ごと押し倒されそうになったが、なんとかこらえた。
「でもね、全部はもらえないよ。だ・か・らぁー、パフェ奢ってもらおうっかなー♪ 新後駅の中の喫茶店に、大盛りのパフェを出してるところがあるんだよ☆」
「まだ食うのかよ!!」
「私の胃袋は銀河系だから♪」
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