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ガサガサという音で目を覚ました。
ふかふかのベットの感触を確かめつつ……確かめつつ?
「はッ」
東郷は勢いよく状態を起こした。この現状に頭がついてこれなかった。
確か昨日はホテルのふかふかのベットで寝ていたはず……なのに、どうしてゴミ捨て場で寝てるんだ。
寝起きのスローな頭をフル回転にはたらかせ昨日の事を思い出す。
俺はキャバクラに行きその帰り女性とホテルに行って……「はッ」
慌ててケツポッケに入れてた財布を取り出し中身を確認した。
あった。
ほっと胸を撫で下ろした。どうやら金は抜かれていないようだ。腕時計を見ると時刻は既に九時を回っていた。
いっけね。会社に電話をいれないと。
ジャケットのポケットを探るがスマホがない。
どうやらスマホをホテル置いてきたらしい。後でホテルに問い合わせるとして、とにかく一旦アパートに帰えろう。
俺は大通りに出て手を上げるとすぐにタクシーが停車した。俺はすかさず乗り込むと「西区の三丁目のマインまで頼む」と伝えるが。
…………
動かない。
「おい。運転手何してるんだ。早くしてくれ!こっちは急いでるんだ」
ミラー越しに運転手と目が合った。
「お客さん悪いけど降りてくれ」
「はぁ?」
「無愛乗車お断りだ」
運転手はそう言って容赦なく東郷を引き摺り下すとそのまま走り去ってしまった。
「くっそ意味わかんねぇーよ。たいして金もってねぇ下民のくせに何様だよ」
悪態をつき地面を蹴り飛ばした。
アパートまでの距離は約一駅分。歩いた方が早いと判断し歩いて向かう。
少し歩くと昨日の酒が残っているのか急に吐き気が込み上げ路上で嘔吐してしまった。
口の中に広がる苦味に顔を歪めつつ周りを見回した。すると丁度目の前にコンビニを見つけた。俺はよたつきながらも店内に入った。
店内を進み冷蔵庫から水を手に取りるとそれをカウンター持っていった。財布から小銭を探りながら店員が金額を言うのを待っていたが何故か店員が反応しない。
店員を見ると気の弱そうな女の子だった。
様子からして新人か。
俺は大きめの声でバックヤードに居るであろう店員に「おーい。新人が困ってるぞ」と言うと目の前の女の子は弱々しい声で「お、お客さん」と言われ俺は眉間に皺を寄せ威嚇するよな目付きで「なに?」と答ると、店員は慌てて目を反らしながら言う。
「あ、あのぉ……無愛購入は……」
「はぁ?なに。はっきり言ってくんね」
「む……むあいこうにゅうは……ご……ごえんりょください」
「あぁまたかよ。たく意味わかんねぇよ。さっきから無愛、無愛って」
俺はカウンターに千円札を叩きつけて水を持ち店を出た。
苦い口を濯ぎながらさっきの店員の発した言葉が頭の中で反芻する。
タクシーの運転手といいさっきの店員といい無愛って一体なんだ?今の流行語か?
スマホでネット検索しようとポケットを探るが、持っていない事を思い出して諦めた。
まぁいちいち気にする事もないか。
俺は立ち上がりアパートを目指した。
てかさっきのコンビニレジ無かったような……
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