笑顔と、涙。

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笑顔と、涙。

独り、放課後の教室で泣いていると、真っ先に声を掛けてきてくれたのは予想通りの人物。 「どうしたの?」と優しい声で聞かれ、益々涙が溢れてくる。 何も言わずにただ泣いていたら、彼女は隣に座って頭を撫でてくれた。 (この涙の理由は……) ふいに顔を上げたら、泣きじゃくって腫れ上がった目を見てすぐにハンカチを渡してくれた。 ハーブの香りがするそのハンカチは、不思議と心が落ち着いた。 「紫音ちゃん、大丈夫?」 「うん、ありがとう……絵李」 そう言うと執拗に問いただすことなく安堵したように微笑む。 (その笑顔が……) 絵李はいつ見ても整った顔立ちをしていて愛らしい。 加えて頭も良く気が利くものだから、まるで高嶺の花という扱いでファンクラブがあり、学校中の男女殆どが彼女に心を奪われている。 「良かった。落ち着いたみたいで」 「お陰様でね」 「そんな!私は……何も……」 ほんのりと顔を赤らめながら否定する。 こんな謙虚な所も彼女の魅力なのだろう。 噛めば噛むほど甘みが出る果実の様に、 知れば知るほど素敵な女の子だ。 (全てを知っている私だから……) 「私、何で泣いてたと思う?」
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