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無為と、傷。
この片想いは、
心地良くて、胸が裂けるように苦しい。
優しい痛み。
明るい闇。
「紫音ちゃん……?」
鈴の音のような彼女の声。
このまま聞き続ければ深い眠りに落ちてしまいそうな程に柔らかい。
「……帰ろっか、絵李」
睡魔が邪魔する前に、微笑と現状に終止符を打つ。
「うん!」
本当は、その大好きな笑顔すら凶器だ。
心臓を握られ、呼吸一つ儘なら無くなる。
(この心の傷を癒すは、)
「あのね、紫音ちゃん」
俯いて歩きながら彼女は続ける。
「何か悩んでる事あるなら、相談乗るよ?」
成程確かに、君はそういう子だ。
だから私も真似た笑顔で返す。
「何も無いよ」
ありがとう。
(至極醜い私の独占欲)
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