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甘味と、銀の。
「んんっ!美味しー!」
絵李はパフェを頬張り、無邪気に表情を溶かす。
その刹那でさえここまで愛らしいなんてズルいな。
(本当、ズルい)
「そうね」
「うん!」
私はイチゴチョコパフェ、絵李はキャラメルバナナパフェ。
「紫音ちゃん、一口ちょうだい」
珍しく強請る彼女に、邪な感情が脈打つ。
(あまりにも貴方は)
スプーンの上に苺にチョコソースと生クリームを絡め、
僅かに開いた口へ運ぶ。
「あーん……んっ。んー、これも美味しいね!」
「でしょ?」
「うん!ありがとっ」
「お返し」と言い、次は彼女のスプーンが眼前に差し出された。
「こっちもどうぞ、紫音ちゃん」
ドキドキと音を立て続ける心臓は、きっと私だけ。
そう知っていても抑えきれない顔の紅潮。
(私の、)
「……じゃあ、いただきます」
声だけでも冷静に放ち、
匙上のキャラメルに絡まるバナナと生クリームを口に含む。
それと貴方の舌に触れた銀色のスプーン。
「美味しい?」と首を傾げる貴方に、私は偽りの笑顔で頷いた。
(私の心を貫き過ぎている)
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