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「八城さん、雑巾とかって借りてもいいかな。捨てても構わないやつ」
「右の一番手前のドア。洗面台の上の棚にタオルがある。うち雑巾ないからどれでもつかって」
「ありがとう」
場所はすぐに分かった。綺麗なタオルを使うのは申し訳なかったが仕方がない。鏡を見ると、顔面が血だらけの男が立っていて驚く。どうやら額を派手に切ってしまったらしい。
頭の上には自分の視界だけでは把握できないほどの長い数字の羅列が見えた。前に見た時より松村さんの分だけ少し減っている気がした。
八城さんのすすり泣く声を聞きながら、血だらけの汚い一万円札に変わった松村ほたるのことを僕は少しだけ考えた。
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