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どんぐり代
その日以降も公園に行くと、やっぱりあの少年は一人で遊んでいた。よっぽど家にいるのが嫌いなのか、それとも何か事情があって居られないのかは知らないが、雨の日でも少年はボロボロになった傘を片手に遊びに来ていた。
俺はというと特にやる事も行くあてもないので、同じように公園にやってきてはベンチに座り、少年が遊びでいる姿をただぼんやりと見つめていた。
自分の人生最後に関わった人間が見ず知らずのガキになるなんて我ながら情けないとは思うが、まあきっとそれが俺の運命だったのだろう。
「……これで終わりか」
ベンチに腰掛けながら取り出した財布の中身を見て、俺はぼそりと呟く。ついにお札も五百円玉も姿を消し、残ったのは百円玉が二枚だけ。どうやら最後の晩餐にコンビニ弁当もまともに買えないようだ。
だったらせめてカップ酒でも飲んで未練たらたらで消え失せるか、と思いながら立ち上がった時、砂場でしゃがみ込んでいた少年も立ち上がった。
なんだアイツももう帰るのか? と思いながら少年の姿を見ていると、どうやら喉が渇いていたのか公園の隅にある蛇口の方へと向かっていく。
「……」
俺は足を止めてその様子を見ていたが、「ちッ」と小さく舌打ちをすると、出口へと向けていたつま先を戻し、少年を呼び止める。
「おいガキ! ちょっとこい」
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