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俺が黙っている間、少年は溢れてくる涙を全部吸い取ろうとするかのように砂で汚れているTシャツで何度もゴシゴシと目元を拭う。
「おいガキ、そんなに擦ると目が痛く……」
そう言いながら右手を伸ばした時だった。少年の腕にチラリと見えたものに、思わず手が止まった。
痣だ。
しかも、一つじゃない。
強くぶつけたのか、それとも握られたのかわからないような痣が少年の細い腕に複数あるのが見えた。
「……」
俺は伸ばしかけた右手をそっとズボンのポケットに入れると、気まずい間を誤魔化すように小さく咳払いをする。
「お前、母親は一緒に来てないのか?」
咄嗟に口をついて出た質問に、少年は小さい頭を横に振った。
「いつも一人だよ。ママはおしごとだから」
「いつもって……毎日この公園に来てるのか?」
「うん」
少年は何の迷いもなく頷くと、赤くなった目で再び俺を見上げた。
「おじさんも、一人ぼっちなの?」
「おじ……」
言われ慣れてない呼び名に、一瞬俺の口端がヒクリと引きつる。……まあコイツから見れば、俺も立派なおじさんか。
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