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「……何だよ」
じーっと俺の顔を見上げる少年に、俺はぶっきらぼうな口調で尋ねた。すると少年はゴクリと唾を飲み込む。
「……喉かわいた」
「は?」
だから喉かわいた、と遠慮もなく再び言ってくる少年に俺は少しイラッとすると、「だったらあの水でも飲んどけ」と公園の隅にある蛇口を指差す。
「俺だって喉も乾いてるし腹も減ってんだよ」
捨て台詞のように強い口調でそう言って、俺は少年の腕を無理やり払い退けると、足早に公園の出口へと向かう。
「ったく、何なんだあのクソガキ……」
自分の生活さえままならないのに、何で見ず知らずのガキに俺が奢らなきゃいけないんだ。
公園を出てからも苛立ちながらそんなことを考えていると、胸のわだかまりが余計に大きくなってしまい、それに引っかかるようにしてふと少年の言葉が蘇る。
――えらい人はおしごとしなくてもいーんだって
「……」
何をもって偉い人というのか俺にはわからない。ただ、もしも立派な仕事をしている人間が偉い人というのであれば、あんな仕事をしていた俺はきっと、『偉そうな人』だったのだろう。
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