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網膜の記憶
「ねぇ、見てよ光瑠。うちの子かわいくない?」
部屋へと押し掛けるなり嬉しそうに同意を求める彰子に、光瑠は一瞬彼女の方を見たあと、すぐにパソコンへと視線を戻した。
「あぁ、そうだな」
感情が一ミリも感じられないその声に、彰子はムッとした表情を浮かべる。
「ちょっと、ちゃんとうちの子見てからいいなさいよね!」
「うちの子って…………」
正直めんどくさい。もうこのやりとりは何十回したかわからない。でも、あまり投げやりにすれば彰子の機嫌が急降下するのは嫌というほど学習済みだ。
仕方なくといった表情を隠しもせず、光瑠は彰子の手元へ視線を向ける。
そこにある可愛いと称されるもの。それは子どもでもペットでもなく、一台のカメラだった。
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