2020年 春

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ところで、何故こんな時代に専業主婦なんだと思う人もいらっしゃるかもしれない。 私は二十二歳で結婚し、二十四歳で母になった。 これが偶然なのか、結婚したのはあの2011年だった。 あの年、私は新社会人だった。 リーマンショックの影響で、就職市場は決して学生にとって好況とは言えず、それでも100社近くの会社にエントリーシートや履歴書を送り、なんとか一社内定に至った。 それが地方のサービス産業だった。 当時第一志望はマスコミや広告関係。(大手というよりはイベント制作や下請けを受けることのほうが多かった)だから、内定を貰った当時は、嬉しさより安堵が勝っていた。 元々、都会の中心部ではないが、都市部周辺の地域で育った私は、交通網の発達し自転車さえあれば何不自由なく暮らせる街に住んでいた。だから、地方の暮らしって当時は想像もつかないくらいであった。 だが、就職活動中、様々な人に出逢い、日本の色んな都市に足を運び知ったことがある。大都会にいると、自分の存在があまりにちっぽけであったこと。システマティックで、ネオン煌めく大都会で生活のゆとりを持つことは金銭面や住居などの選択の幅が限られてしまうこと。 何度か東京という、日本の大都会を練り歩き、その異常な程に発達した交通網と人の多さに酔っては、心細さから逃げ出したくなる自分がいることに気付いた。 そこで、第一志望がどうあれ、もう都会を目指すよりは地方にも視野を広げてみようと、大企業や有名企業ではなく地方産業に目を向けるようになった。 そして、東海圏あたりの企業に何社かエントリーし、最終的にはその中のある一社に就職した。
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