花羽

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胸の(なか)に ふるえがいる。 梢のつぼみの膨らみ。 まだ指に つめたい硝子。 羽ばたきのように ちらちらとする重なり葉の()から、ちらちらと 光る目を見た。 あれは 何処だったか。 「窓の外ばかりをみているの?」 その声に いちどに憂鬱になった。 起きていて 目を覚ます。 何故 何時(いつ)も、肉の内から笑うのだろう? すすきの先 微生物の脚 繊毛のようなものが 胸に 喉に 這いずる。 見ないふりをして 笑い顔の真似を返すのだけど。 「よくなかったかな? 悪いとおもってる」 窓の影を 顔に肩に胸に映して こころを取り繕い、母親のような眼差しをする。 そうした眼は、きらいでないけど その眼をするのは、おれのためではなく きみのためだろう。 「わるくは、ないけど」 まっぴるまの (なまめ)かしさ。 「ごめん。今日は、忘れてきたんだ」 艶を忘れ、「わすれて?」と 考えて 思い当たると、彼女は はじかれたように笑った。
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