花羽

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花を見つけた。 君を埋めた近くに。 白い花のはなびら。 そこにも咲いている。君の花を這って追う。 どうして こんなに咲いているんだろう? 花は 色を見せだした。 あかに。きに。うすももに。だいだい、あおいろ。 それは、うすく、花脈を透かして 肉厚にひらく。 握った草の汁がつく。 あのとき、君の腿に なすりつけて汚した。 這っても 這っても、花がある。花が。 ちぎりなぶって、手の甲に、鎖骨に、眼の下に、 おれに張り付く。ふるえは まだあった。 ひかりは目じゃない。夕ぐれ色だ。 やがて花は、まぶたを塞ぎ、耳を塞ぎ、喉を塞いだ。 夜の中 あかの花に 色の花にまみれ窒息する。 花の奥。なんという甘美。 あれは 羽ばたきか 花のひらだったか、蝶の羽だったか ぐじりと噛んだくちびるに、粉が付き 弱々しい脚がうごめく。
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