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十円玉に賭ける
僕はふと思い立った。筆箱に緊急用に十円玉が入っているのを。迷子やなにかあったとき、公衆電話用に入れてあるものだ。おやつはお金がなければ買えない。だがしかし、お金の代用になるものがあればあるいは。僕は十円玉を強く握りしめた。
「この十円玉に賭けるしかない!」
僕は闘志に満ちた表情で駄菓子屋に向かった。駄菓子には当たり外れのものがある。中には金券として使えるものもあるのだ。そうなのだ、僕はそれに賭けていた。僕は十円玉で買えて、最大百円が当たるスナック菓子を手に取り見定めた。こういうものには必ず攻略法があるのだ。トレーディングカードで開封せずにレアカードを引けてしまうように。当たりがあるパッケージにはエラーが起きやすい。印刷がズレたり、他のと比べて何かしら違和感があるはずだ。僕は一つ一つ丁寧に違いを確認する。駄菓子屋のおばさんの目は気にしない。
「これだ!」
僕は見落とさなかった。蓋の部位に若干の凹みがあった。人為的でなく生産時に発生したであろう爪楊枝で指したような凹みだ。おばさんに十円玉を渡し、深呼吸をし緊張感に包まれながら封を開ける。ゆっくりゆっくりじらすように開ける。外せば終わりだ。なにもかも。見たくないけど見なければいけない。その葛藤がもどかしい。結果は既に決まっているのだ。息を吐き出し意を決して見た。
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