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編集と作者の打ち合わせ at 会社と自宅
「カードは使えませんよ?」
画面越しの編集から、強めの口調でコメントを受ける。
「カードの審査が通るなら、こんな生活していませんって」
そうなのか、知らなかった。
審査に通らない、そんなことがあるのか。
「ここは、ツケで、というセリフに変えましょう、まったく」
ツケ、小説の中では聞いたことがあるが、現実に存在するのか。
今回「お金がない」というテーマで小説の依頼を受けたが、どうにもうまくいかない。
42インチの画面越しにPCでTV通話をしつつ、キーボードで今の言葉を打ち、隣の液晶タブレットで場面のプロットを描き、編集に見せる。次いで、のどが渇いたので、コーヒーをAIスピーカーに頼み、足にぶつかる掃除ロボットの向きを変え、部屋の設定温度を少し下げた。。
「あー、そんな情景ですが、右手のカードはいりません。それに、なんでゴールドなんですか、ふざけないでください!」
いたって大真面目だが、えらく怒られてしまった。
「いいですか、とにかく、もっとここは現実味を出してください!先生の書くファンタジー小説は、確かに現実離れしていて、その個性がとても好評です。でも、今回のような現実味あふれるテーマの時、あなたの持つ常識と一般常識がの乖離が、如実に現れます。もっと現実を見てください」
いつもと同じ、異世界を背景に、自分の世界観を展開すれば良かったか。
「せっかくこれまでとは違ったテーマを頂けたんです、他の分野にも進出するチャンスです!いつもの設定に逃げないで、きちんと向き合ってくださいね!それじゃ、また出来たら連絡ください」
私の考えを見抜く慧眼を発揮しつつ、他の打ち合わせのために通話が切られた。コーヒーの良い香りがしてきたので、立ち上がる。鼻腔に香り豊かなコーヒーが心地よい。
コーヒーをすすりながら思案する。
「お金が無い」とは、いったい、どういうことなんだ?
俺には、理解できない。
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