エリーへ

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 エリー。覚えているかい?  何回目かのデートだった。晴れた空に、雲が薄くかかって温かい風が吹いていたな。あれは気持ちの良い春の一日だった。目的もなく、二人で町や川沿いをブラブラしていたっけ。  ひねくれ者の俺は、君を流行りの映画やショッピングに誘ったりなんて出来なかった。そんなのはガキっぽい奴らにさせておけと思っていた。つまらない意地を張っている俺が一番子供だったのに。そのくせ、内心では退屈させてやしないかとビクビクしていたんだ。捨てられるのが怖い。だったら、先に捨ててやればいい。 「退屈なら帰っていいぞ」  不機嫌を装って強がった俺に、君は笑顔でこう答えた。 「今日はお散歩日和だから。歩いているだけで楽しいわ」  あの時、君が気を遣ったんだろうと思った。恥ずかしくて、申し訳なくて、次はおしゃれなカフェに連れて行ったんだった。でも、今ならわかるよ。君は本心でああ言ったんだろうって。君と歩いていたら、ただそれだけで俺はとても楽しかったんだ。君の笑顔を見て声を聞いていたら、それだけで満たされていたんだ。
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