エリーより

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エリーより

 ファッションを楽しんだのはいつぶり? 一人でゆっくり映画やショッピングに行ったのは何年ぶりのことだったかしら?  久しぶりに出来た一人の時間はとても自由で開放的で有意義なものだったわ。刺激的だった。でも、少しだけ退屈で寂しかったの。赤いルージュも綺麗なネイルも、私にはなんだか似合わないみたい。  街を歩くと、オシャレなお店や洋服よりも人に自然と目が行くの。若いカップルが楽しげに話しながら腕を組んで歩いていたり、元気な男の子をお母さんが慌てて追いかけていたり、歩いている人の数だけ人生があってドラマがあるのね。  私の人生はどんなドラマなのかしら? きっと華やかなトレンディドラマは似合わないと思う。大きな事件は何も起きないけど見ていると心が温かくなる、私はそんなホームドラマの主人公がいい。  ビル。私の愛しい人。そろそろ音を上げているんじゃないかしら?  あなたってば、強がってはいるけど本当はとても繊細な人だって私はわかっているのよ。それ以上に意地っ張りなところもね。  いつもムリな仕事を引き受けて、それなのに外でも家でも弱音はまったく吐かない……そんなんじゃ、心も体ももたないわよ。私が気づいていないと思ったのかしら?  あなたの傷つく姿は見たくない。壊れてほしくない。でも、素直じゃないあなたは私がいくら言っても聞いてくれなかった。だから、私は姿を消したのよ。  あなたのことが嫌いになったわけではないの。むしろ愛しているの。だから、どうか許して欲しい。
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