ブリーダーの悩み

　穴があったら入りたい、とはこの事だ。
　高いレベルで環境を維持しているブリーダーほど、借金を嫌うものだというのを失念していた。
「もう少し考えて見ろ。お前は何か見落としているんじゃないか。進むばかりが能じゃないぞ」
　切り際、先輩は僕にそんな言葉をかけてくれた。
「はい……」
　その意味も良く分からないまま、僕はそう返事をして電話を切った。
　直後に後悔したが手遅れだった。
　考えてみるが、何も思いつかない。
　水槽の中で元気にしている一万円札達を見ながら、僕は彼らに対して申し訳ない気持ちになるのだった。