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「お小遣いの日まで、あと三日」  カレンダーを見て、お小遣いの日までを指折り数える。  その頃には、家の中におやつになりそうなめぼしい物はなくて、学校から帰宅して夕食までの間、私は必ずと言っていいほど、お腹を空かせていた。  空腹は人を辛い気持ちにさせる。  無駄と知りつつ冷蔵庫や戸棚を確認しても、中にお姉ちゃんの作ったおやつなんてない。  でも、いくつか良いものを見つけた。 「ホットケーキミックスとリンゴ。こんなのがあったんだ」  正直、料理なんて家庭科の調理実習以外でしたことがない。  けれど、ホットケーキミックスの袋に載ってるホットケーキの作り方は簡単そうで、私でも作れそうだ。 「よし! じゃあ、お姉ちゃんの真似をして、リンゴも入れよう」  おやつの日がなくなってからすっかりご無沙汰になっていたリンゴのケーキ。  それをまさか自分で作る日が来るとは、思ってもみなかった。 「リンゴって、どうやって切るんだっけ? それに、そのまま生地に入れていいのかな?」  調理実習で習ったリンゴの切り方を思い出しながら包丁を扱うものの、なかなか上手にはいかない。  十六等分のクシ型に切ったけど、大きさが全然違うし、剥いた皮は凄く分厚くなってしまった。  リンゴを切ったら、次はホットケーキ生地。  でも、卵の殻は入るし、混ぜた生地はダマだらけ。  しかも、リンゴを入れようと、まな板の上のそれを見ると、茶色に変色しているし。  焼く作業も散々だった。  フライパンは重いから、濡れ布巾の上に一旦置くのもひと苦労。  生地をひっくり返すのも失敗した。  原因は、夢みたいに大きなケーキを食べたいと、出来た生地を全部フライパンに入れたせい。  フライパンの縁と柄に乗り上げてしまって、さあ大変!  おかげで、形はイビツだし、盛大に跳ねた生の生地が、フライパンを中心にあらゆる所を汚す始末。  しかも、ケーキは黒焦げでもう、最悪!!  結局、出来たリンゴのケーキは、酷い出来だった。  食べても、焦げで苦いし、中は生で粉っぽいし、リンゴも生でぬるい。  こんなマズイもの、初めて食べた。
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