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「ただいまー」  学校から帰宅しても、家には誰もいない。  いつもそうだ。親は仕事で、姉は学校、弟は遊びに行ってる。  でも、寂しくはない。だって、留守番なんて慣れてるし。  帰ったら、すぐさまうがい手洗いをして、それから真っ先に戸棚へ向かう。  毎週月水金はおやつの日。  この日は、手作りのおやつが戸棚の中で私の帰りを待っている。  今日のおやつはチョコのカップケーキ。  定番のおやつは、クッキーと蒸しパン。  あとは、ドーナツ、カップケーキ、マドレーヌ、パウンドケーキ、どら焼き、団子、みつ豆、ゼリーにプリン……とにかく、色々。  甘いのだけではなくて、肉まんやアメリカンドッグなんて、しょっぱいおやつもある。  そして、ちょっと特別なことがある日や、テストで良い点を取った次の日は、おやつのリクエストもできた。  私が決まってリクエストするのは、リンゴのケーキ。  甘く煮たリンゴがたくさん入ったホットケーキで、これがすごくおいしい!  このおやつの面白いところは、いつも味や形が違うこと。  生地がふかふかで分厚かったり、厚みはないのにずっしりしていたり、甘かったり、少し塩味があったり。リンゴの形や風味、食感だって、いつも違う。  でも、どれもすごくおいしいから不思議。  もちろん、他のおやつも好き。  うちにある手作りおやつは、絶対においしいの。  たとえ外で嫌なことがあっても、おやつを食べれば、すぐに忘れちゃう。  楽しいことがあった時や、家に誰かいる時に食べるおやつなんて、いつにも増しておいしく感じられた。  本当に、素敵なおやつなの!  私が一日の中で最も楽しみにしていると言っても過言ではない、手作りおやつ。  それを作っているのは、四つ年上のゆづるお姉ちゃんだ。  お姉ちゃんがお菓子作りを始めたのは、小学三年の春。  それから七年間、彼女は勉強や部活、趣味の手芸がどんなに忙しくても、自分の分だけでなく、私と弟の分までおやつを用意してくれた。  おいしいお菓子を作れるお姉ちゃんは、私の自慢だ。
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