クイーンパラドックス

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私の人生にけちがつきはじめたのはいつからかと誰かに尋ねられたら、二十年前、プロムクイーンになりそこねた所からだと話すだろう。 もし、あの時クイーンになれていたなら、今こんな窮屈になりかけていて油染みの抜けきれていない野暮ったい制服を着て、ダイナーのテーブルを拭いたり、少ないチップの金額に一喜一憂したりもしないだろうし、住む場所もおんぼろのトレーラーハウスなんかじゃなかったはずだ。 ママだってキッチンドランカーにならなかったはずだし、パパが胡散臭い投資話に乗って借金まみれになることも、ショットガンで頭をぶち抜くこともなかったはずだ。 きっと私の話を聞く人はプロムクイーンとこれまでの私の人生に起きた数々の悲劇には関連性がないときっぱりと否定するに違いない。クレイジーだって言われてもしかたのないことだとは承知の上であえてもう一度言う。あの時プロムクイーンになっていれば今とは全然違う人生になっていたと私は確信している。綺麗に並べたドミノの最初に倒れた一枚だったと信じている。 「やあ、ケリー。コーヒーをもらえるかな?」
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