クイーンパラドックス

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◇◇◇ 「ねえママ、どうしてせっかくの結婚記念日にランチに決まってここに来るの?」 ケイティーは膨れっ面でチェリーパイを突っついている。ぶつぶつ文句を言っているけどここのチェリーパイだけは最高だと彼女はよく知っている。私が教えたのだ。 「初心忘るべからずってとこかな」 「ここでパパに勉強を教えてもらった思い出話のこと?」 とんでもない。絶対にここのテーブルを二度と拭かないという戒めの意味だけれど、そんなことはこの子に言っても分かるはずがない。 あの日稲妻にうたれて90年代に戻ってシェイマスに数学を教えてもらってから私の人生は前の20年とは全く違うものになった。 数学のテストには落第しなかったけど、ジャクソンを自分から振った。私がシェイマスとプロムに行くと言ったらジャクソンはカンカンだったけど20年前の意趣返しはきっちりできた。 「ごめんなさい。私ってほら、頭があまりよくないでしょう? だからシェイマスの頭脳ってたまらなくセクシーだと思うの」
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