クイーンパラドックス

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シェイマスは何かモゴモゴと言いかけてから小さく「ああ」と言ったので、私は不味いコーヒーと言われてムカついているオーナーの横をにこやかに通り過ぎてコーヒーを注いだ。表に止められているアストンマーティンが目に入る。シェイマスの車だ。 アストンマーティンになりたい。なんならハーレーダビッドソンでもいい。どんな男からも間違いなくとびっきり大切にされる。機嫌を損ねて動かなくなっても面倒くさいなんて思われない。丁重に扱ってもらえる修理工場に連れて行かれるか、優しくオイルを差してもらえるはずだ。 今より少し若かったころは乗り込んだり跨ったりする前なら私も大事にされた。 その後の方がずっと大事にされるアストンマーティンやハーレーダビッドソンに憧れるくらいには私は男どもに失望している。 その日仕事を引けると土砂降りだった。まるでホラー映画のイントロダクションみたいに目を閉じているのか開いているのか分からなくなるくらい真っ暗な夜空だった。本能的に急がなければいけないと思った。びしょ濡れになっておんぼろトレーラーハウス帰ると案の定が起きていた。 「ママ?」
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