クイーンパラドックス

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ママは万年床で寝ているように見えた。でも普通じゃないことがすぐに分かった。私が自分のバッグに隠しておいたはずの開けたばかりの睡眠薬のプラスチックのボトルが安ウイスキーのボトルと一緒に枕元に転がっていた。 「ママ!? ねえ!? ママ?」 息があった。救急車を呼ばなきゃいけない。母親が生きていたことに少しでも残念な気持ちがある自分を呪いたかった。医療費がどれだけかかるか思うとゾッとする。惨めだった。お金がないことは惨めだ。お金がなくなったせいでパパだって頭をぶち抜いた。溢れる涙を拭った。私は自分の携帯電話をポケットから出してすぐに通話ボタンを押したけど電話が使えない。今朝家を出る前にくしゃくしゃにした請求書のことを思い出した。 「ママ、待ってて、救急車を呼んでくるから」 トレーラーハウスを飛び出した瞬間だった。強烈な光と地面が割れるような音がして私は気を失った。
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