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見つかったか、と慌てて顔をひっこめて身を強張らせる。
「もしもし? ああ、マグネイザー……。うん、今昼休み」
どうやら、電話がかかって来たらしい。マグネイザーもヤミノス団の幹部の一人だ。
「そっちはどう? 問題なく続けられてる? ダメよ、キレたりしちゃ」
どうやらマグネイザーも身分を隠し、どこかで働いているらしい。ますますもって陰謀の匂いがする。
「こっちは大丈夫よ。ほんと。そっちは?」
む、マグネイザーがどこに潜り込んでいるのか、聞き逃さないぞ。
「まあ、肉体労働は得意だもんね。ちゃんと監督の指示聞いてね。え? 効率悪い? 駄目よ、そんな事言っちゃ。現場のやり方って言う物があるでしょう」
工事現場か? あるいは何かの建設?
「貴方なら大丈夫。プロフェッサーの我儘だって聞いてきたじゃない。そうよ。自信もって。もし何かあるなら、まずは提案っていう形をとってみたらどうかな? そうそう。和を大切にね」
さすがは組織。結束力の大切さを知っているという事か。これは内部からじわじわ乗っ取る作戦か?
「……え? 私は大丈夫だって……。そっか、分かっちゃうかぁ」
ん? 何やら様子が変だぞ?
「マグネイザーって凄いね。分かっちゃうんだ、私の声で。そうなの……実は大変。ちょっと心折れそうかも」
午前中の事を言っているのだろうか。やはり堪えていたらしい。
大丈夫、まだ慣れていないだけだから。
って、励ましてどうする。あいつは敵だぞ。
けど、クレオライナが弱音を吐いているのが信じられない。
俺と対峙するときの、あの自信満々な様子はどうしたんだ。
「分かってる。やめたりしないよ。マグネイザーが頑張っているんだもん。私だって頑張らなきゃ。……でも、こんなことしてて、活動資金って貯まるのかしら。分かってる。他のみんなも頑張ってるんだもんね。お金がないって……辛いね」
何やら世知辛い響き。耳が痛い気がした。
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