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公園から出ていく足音を聞いても、しばらく俺は遊具の中で考えていた。
「ヤミノス団も頑張ってたんだな……」
なんて頑張り屋さんな悪の組織何だろう。
悪事を諦めたわけでは無く、再び動き出すための金をためている最中だったとは。
本来なら妨害するべきなのだろう。
肉屋の店先でクレオライナと乱闘して見せれば、たちまちクビになるのは間違いない。
けど、それはしちゃいけない事のような気がした。人として。
それより今は……。
俺は遊具の中から出た。
薄暗い遊具の中にいたせいで、外の光が眩しかった。
長い間体を丸めていたせいで、腰や背中が何となく固まってる気がする。
大きく伸びをすると、青い空が目に入った。白い雲もゆっくり流れている。
鳥が一羽、スーッとその空を横切って行った。
「はたらこ……」
公園に植えられた桜についたつぼみが、ほころびそうな程に膨らんでいる事に今更気づいた。
俺が働き始めたら、尚美は俺と花見に行ってくれるだろうか。
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