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……と、言いたいところだが、実はここの所世界は平和だ。
ヤミノス団が現れたという報告はなく、それらしき事件も起きていない。
狭苦しいワンルームマンションの窓から見る世界は穏やかそのもの。だが、もちろん油断は禁物だ。ヤミノス団を根絶できたわけでは決してないのだ。奴らは今も巨大な悪事をどこかで企んでいるに違いない。
とはいえ、この調子なら今年は花見に行けそうだ。
去年は邪魔されたからなぁ……。
「……それよりさ、そろそろ働こうよ」
「ぐふっ……」
背後から俺を言葉で刺すのは誰だ!?
飲んでいたコーヒーを吹きかけたではないか!!
「…って、何だ尚美か」
「何だ尚美か、じゃないわよ。ここ、私んちだからね」
「細かい事を言うなよ。俺達、恋人同士だろ。お互いの家を出入りする事もあるだろう」
狭苦しいワンルーム、と言ってしまったのは失敗だったが。
「へえ、じゃあ君んちにも入れてよ」
「うぐ……」
そう言われると返す言葉が無い。
「ねえ、どうなのよ」
「その……無いです」
「そうよね。家賃が払えなくて追い出されたのよね」
「はい」
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